勉強しているのに不安が消えないエンジニア~将来に振り回されない「自分の軸駆動個人開発」~
勉強しているのに不安が消えないエンジニアのための、自分の軸を見つけて個人開発を始める方法
🐾 エンジニア × 数学 × ボルダリング のねこエンジニアが書きました
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立ち読み感覚でどうぞ。序章〜2章+付録の一部を掲載しています。
Boothから無料版PDFのダウンロードも可能です
はじめに
「勉強はしているけど、本当に仕事で役立つだろうか…?」
「生成AIが成熟したら、私の仕事は無くなってしまうのではないか…?」
「周りの人は、どんどん成長している…」
勉強しているのに、何となく不安を感じている。こんな経験はないでしょうか?
何となく不安なまま、何となく勉強を続けても、不安は消えません。そのうえ、勉強することはいくらでもあります。JavaやPythonなどのプログラミング技術、AWSやAzureなどのクラウド技術、ネットワークやデータベースなどの基礎技術、勉強することはいくらでも出てくると思います。そのため、不安→勉強→不安…のループから抜け出すのは簡単ではありません。
ここで、この悪循環から抜け出すためには、「漠然とした不安」ではなく「明確な目指す先」が必要です。そして、その目指す先が自分の軸——自分の中にあるやりたいこと、キャリア像、強み——です。
そして、本書が提案するのが、自分の軸を目的とした個人開発です。不安ではなく、自分の中にある目指す先を「軸」として見つけ、個人開発という実験場でそれを磨いていく。そして、個人開発で得た気づきを基に自分の軸を更新する。そうすることで、悪循環ではなく、明確な目的を持った成長の好循環へと変わっていきます。
本書は、筆者が実際に6ヶ月間の個人開発を通じて試行錯誤した記録をもとに、軸の見つけ方・個人開発の進め方・軸の育て方を具体的にまとめたものです。特に「勉強しているのに手応えがない」「何から始めればいいかわからない」と感じている若手エンジニアの方に、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。
本書における個人開発の定義
本書における「個人開発」は、純粋な開発(コーディング)に限らず、広い意味でとらえています。
例えば、企画や要件定義(文書のみを作成し、実装はしない)も含まれます。本を書くことも広い意味で、個人開発に含まれます(本書の出版も、筆者の個人開発の一環として考えています)。
対象読者
本書は、次のような方に向けて書きました。
- 勉強しているのに、手応えがない人
- 資格を取った、技術書を読んだ。でも「これで本当に成長しているのか?」という不安が消えない
- 生成AIの登場で、自分の価値が揺らいでいる人
- 「自分が勉強してきたことって、AIに聞けば一瞬で返ってくるのでは?」という焦り
- 個人開発に興味はあるけど、サンプルコードで止まってしまう人
- チュートリアルは動いた。でも「これで終わり?」「次に何をすればいい?」が見えない
- 「自分なりの軸」を見つけたい人
- 周りと比べて焦る日々から、自分の方向性を持って進みたい
特に、新卒3年目前後のエンジニアを想定しています。
ただし、年次に関係なく「勉強はしているけど、このままでいいのか」というモヤモヤを抱えている方には、きっと響く部分があるはずです。
対象読者ではない人
本書が合わない可能性がある方も書いておきます。
- 個人開発で収益化したい人
- 本書は「稼ぐ」ための本ではありません。マネタイズのノウハウは扱いません
- すでに自分の軸を持ち、迷いなく進んでいる人
- 本書は「軸を見つけて育てる」過程を扱うため、すでに確立している方には物足りないかもしれません
- 個人開発に興味がない人
- 本書の具体例は個人開発が中心です。仕事を中心に成長したい方には、事例が響きにくいかもしれません
- 技術的なハウツーを期待している人
- 「Reactの書き方」「AWSの構成」といった技術詳細は扱いません
本書の構成
本書は、序章と4つの章、終章、付録で構成されています。
序章では、筆者の体験をもとに「なぜ勉強しても不安が消えないのか」という問いを深掘りし、悪循環の構造を明らかにします。そして、その解決策として「自分の軸駆動個人開発」の全体像を提示します。
1章では、「自分の軸」の見つけ方を説明します。源泉・キャリア像・独自性・戦略という4つの要素を軸として整理し、深掘りによって言語化する方法を紹介します。
2章では、自分の軸を「個人開発のテーマ」へと落とし込む方法を説明します。何をするか・大切にしたいことを明確にし、目標を設定するまでの流れを紹介します。
3章では、個人開発を進める中で生じる「作り込み」の罠と、自分の軸に従った取捨選択の方法を説明します。
4章では、個人開発を通じて感じた違和感を気づきに変え、自分の軸を更新していく方法を説明します。
終章では、筆者が個人開発を通じて得たものを振り返り、次のテーマへと進んでいきます。
付録では、本文に書き切れなかった半年間の個人開発の記録を書いています。実際に使った手書きノートを始め、筆者の軸や経験や学びなど、30ページ超えの内容です。
なお、本文だけでも、付録だけでも読めるようにしていますし、それぞれの関連する箇所へ言及しているので、行ったり来たりしながら読んでいただいても大丈夫です。
各章の末尾には、読者が実際に手を動かすための演習を用意しています。本を読み終えたときに「自分の軸が見つかった」「個人開発を始めてみよう」と思えるよう、ぜひ演習にも取り組んでみてください。
謝辞
本書の執筆にあたり、お世話になった方々に感謝申し上げます。
コーチングを通じて、筆者自身の軸を言語化する機会を与えてくださった森木さん。個人開発を始めた頃から本書の執筆が終わるまで、長い期間お世話になりました。「なぜそう思うの?」「それは具体的にどういうこと?」と問い返してもらったことで、自分でも気づいていなかった考えが少しずつ言葉になっていきました。本書のコアコンセプトは、あのやりとりの積み重ねの中から生まれたものです。
また、友人の花澤さんにも感謝申し上げます。完成した原稿に感想やフィードバックをいただき、自分では気づけなかった点を見直すきっかけになりました。
最後に、本書を手に取ってくださった読者のみなさんにも、感謝申し上げます。この本が、みなさんの不安を和らげる一助になれば幸いです。
序章:成長を加速する「自分の軸駆動個人開発」
「このままで良いのだろうか…?」
これは、筆者が感じていた不安です。
この不安を解消するための方法が、「自分の軸駆動個人開発」です。
【筆者の例】勉強しても手応えがない日々
不安の正体を知るために、まずは当時の筆者の不安を紹介します。
筆者は新卒未経験でSIerに入社しました。スペシャリスト志向だったこともあり、技術書を読んだり、IPAやAWSの資格取得をしたりなど、基礎を重視しつつ色々と勉強をしていました。もともと技術が好きだったこともあり、勉強に対するモチベーションもそれなりにありました。
ただし、徐々に変化が現れました。
「勉強しているだけで大丈夫だろうか?」
このような変化が現れた一番の理由は、新卒3年目になり、知識だけではダメだと感じ始めたからだと思います。例えば、同期の中には自分より上のグレードに昇格している人や、難易度の高いプロジェクトに入り活躍している人もいます。また、生成AIが発展して、このままでは生成AIに仕事が奪われてしまうのではないかという不安もありました。特に、生成AIの知識量は膨大で、その領域では確実に負けていると感じました。
徐々に不安という感覚が強まっていきました。
実務での"経験値"の必要性を感じつつ、今できていることは勉強や資格取得中心で、それも業務に直接役立っていないなと感じていました。また、単純な勉強だけでなく、ちょっとした実践(チュートリアル+α程度の実装など)もやっていました。しかし、不安は消えませんでした。
「付録:個人開発を本格的に始める前」「自己分析と最初の『自分の軸』」にはもっと詳しく書いています。興味があれば合わせてご覧ください。
不安の正体を深掘りする
前節は筆者の話ですが、共感できる部分はあったでしょうか?ここからは、不安の正体を深掘りしていきます。
先ほどの筆者の例の中から、不安の要素を取り出してみると、以下の3つがありそうです。
- 将来や業務に役立たないという不安
- 知識だけ、勉強だけ、資格だけになってしまう不安
- 生成AIや周りと比べて不安
次に、それぞれを深掘りしていきましょう。
- 将来や業務に役立たないという不安:方向性の問題
- 実際に役立っていない
- 将来に役立つかわからない
1つ目の不安の正体は、方向性の問題です。
まず、業務に直接役立つことが本当の目的でしょうか?もしそうなら、業務で使っている技術や必要な知識を学べばよいのではないでしょうか。しかし、実際には目の前の業務より、少し先の将来を見据えているように思えます。
では、「将来に対して役立つか?」を考えているとどうでしょうか。これは難しい問題です。将来は、どうなるかわからない不確実性の高いものです。そして不確実なものに対して役立つかどうかは、本質的にわからないものです。
つまり、将来や業務という方向性があるように見えて、実際には「明確な方向性を持っていないこと」が問題なのです。
- 知識だけ、勉強だけ、資格だけになってしまう不安:深さの問題
- 勉強しても生成AIに知識量で勝てない
- 実践しても挫折してしまう
2つ目は、深さの問題です。
できることや目の前のことを勉強するのは、短期的には取り組みやすく、問題ないように見えます。しかし、"とりあえず"に陥ってしまい、広く浅くから抜け出せなくなってしまいます。
知識だけではダメだと感じているのにもかかわらず、"とりあえず"を勉強することでは、知識量を増やすだけで根本的な解決にはつながらないでしょう。また、いざ深く実践しようにも、1つ目の問題の通り方向性がないので、実践しても挫折しやすいのだと思います。
- 生成AIや周りと比べて不安:比較の問題
- 他の人の良い所だけを見ている
- 自分の強み・どこで勝負するかが明確でない
3つ目は比較の問題です。
「隣の芝生は青く見える」ということわざもある通り、他人のものは良く見えやすいです。
この原因は、自分なりの勝負所がないことです。それがないと、目に入った他人の良い所と比べてしまい、どうしても自分が劣っているように感じてしまうのだと思います。
まとめると、3つの不安を深掘りすることで、以下の3つの問題が見えてきました:
- 将来や業務に役立たないという不安:方向性の問題
- 知識だけ、勉強だけ、資格だけになってしまう不安:深さの問題
- 生成AIや周りと比べて不安:比較の問題
悪循環に陥る
前節で不安の正体を深掘りしましたが、さらに問題のある構造が見えてきます。それが不安の悪循環です。
まず、「自分がどこに向かうべきか(目指す先)」が不明確であるため、どこで注力するか(戦略)が決まりません(方向性の問題)。結果として、広く浅くに陥ります(深さの問題)。そして、自分の強みも見つからず、他人との比較軸も曖昧で漠然とした不安に陥ってしまいます(比較の問題)。結局、目指す先が決まらないまま、悪循環に陥ってしまいます。こうして、将来や業務に役立つのかという不安も、この悪循環のなかで増幅されていきます。
特に、現代において勉強することが尽きることはないため、意識しないと一生このループから抜け出せないと思います。
この悪循環から抜け出すための方法が「自分の軸駆動個人開発」です。
「自分の軸駆動個人開発」による転換
悪循環から抜け出すために必要なのは、「自分がどこに向かうか(目指す先)」を見つけることです。しかし、不安の正体で見た通り、将来を考えると不確実性が高いです。
そこで、「自分の軸駆動個人開発」による重要な転換は、自分の軸を目指す先とすることです。将来という不確実性の高いものではなく、自分の中に視点を切り替えるということです。ここは1章で詳しく見ていきます。
目指す先が見つかったら、次に戦略を決めます。これは、「個人開発のテーマ」として考えます。個人開発という実験場で、自分の軸を検証するためのテーマを定めます。ここは2章で詳しく見ていきます。
テーマが決まったら実践(個人開発)を始めます。テーマに沿って進めるのが基本ですが、何も迷いなく進められるとは限りません。ここで重要になるのは自分の軸を判断軸とした取捨選択です。適切に取捨選択をすることで、戦略(テーマ)に従って深く実践できます。ここは3章で詳しく見ていきます。
最後に、個人開発で得た違和感や気づきを基に、自分の軸を更新していきます。自分の軸とは、正解があるわけでも、すぐに明確なものが見つかるわけでもありません。大切なことは、更新し続けることです。ここは4章で詳しく見ていきます。
好循環のさらなる作用として、個人開発で得た学びや気づきは業務にも還元されます。個人開発で更新した軸は、業務の方向性にも活きてきます。
ここまで「自分の軸駆動個人開発」の流れを見ていきましたが、実は悪循環の流れと対応しています。自分の軸を見つけ、それを基点に悪循環から好循環へと転換していくのです。
目指す先が不明確 ~自分の軸を見つける~
序章で見た通り、不安の正体の一つは「自分がどこに向かうか(目指す先)が不明確であること」でした。本章では、方向性がない状態から、自分の軸という指針を見つけるための道筋を説明します。
「自分の軸」とは何か?
序章で説明した通り、「自分の軸駆動個人開発」における最初の転換は、目指す先がない状態から、自分の軸という指針を見つけることです。
自分の軸は、"自分の中にある、やりたいこと、キャリア像、自分の強みなど"です。
特に重要な点は、自分の中にあるということです。つまり、目指す先を考えるうえで、
- 「将来」という不確実なものを対象とせず、
- 「自分の軸」という自分でコントロールできるものを対象にする
ということが重要なのです。
次に、自分の軸があるメリットを考えてみます。自分の軸という目指す先(目的)がはっきりするということで、結果的に不安が減ることがメリットですが、それ以外にもあります。
| 内容 | 自分の軸がある | 自分の軸がない |
|---|---|---|
| 勉強が役立つか? | 役立つかが明確になる | 役立つかどうかが曖昧 |
| 勉強の効率 | 目的が明確になり効率が上がる | とりあえずで進めてしまい効率が下がる |
| 不安 | 上記の結果、不安が減る | 漠然とした不安が残る |
自分の軸があることで、役立つかが明確になります。また、目的も明確になるので、例えば、やるべきこと/やらなくてもよいことがわかるようになり、勉強(もしくは個人開発など)の効率も上がります。
そして、結果として、不安が減ると考えられます。
自分の軸は、源泉/キャリア像/戦略/独自性で考える
つぎに、軸を見つけるうえで、重要な要素を説明します。それは以下の4つです:
- 源泉:「なぜ?」の部分。やりたいこと、好きなことなど
- キャリア像:将来(例えば10年後に)なりたい姿
- 独自性:周りの人(やAI)にはない自分だけの強み
- 戦略:キャリア像に対して必要な要素
中心となるのは「キャリア像」です。スペシャリスト志向の人やマネジメント志向の人もいるでしょう。特定の技術に強みを持ちたい人、特定の業界に特化したい人もいるでしょう。
次に重要なのは「源泉」です。キャリア像に対して「なぜ?」の部分です。例えばスペシャリスト志向な場合、技術が好きだから、理論が好きだから、モノづくり(実装)が好きだからなどがあるでしょう。
そして次に「独自性」です。好きや得意、自分ならではの強みや経験などです。独自性を持つことで、周り(特にAI)と比べて感じる不安ではなく、純粋に自分の軸に集中できる(周りと比較対象ではなくなる)ようになります。
最後に「戦略」です。キャリア像に対するHowの部分です。今の自分とキャリア像を比べたときに足りない要素や今後やるべきことを考えます。これを基に個人開発のテーマを決めていきます(個人開発のテーマについては次章で詳説します)。
図2の上流(源泉や独自性)が「なぜ」に当たる部分です。例えば、下流(キャリア像や戦略)で迷いが生じることがあります。このとき、上流を指針として、下流の方向性を変えたり、深めたり、優先度を決めたりすることができます。
【筆者の例】筆者の源泉、キャリア像、戦略
つぎに、具体例として、筆者の軸を説明したいと思います。ここでは源泉、キャリア像、戦略に絞って説明し、独自性については次節以降で説明します。
筆者の場合、10年後に目指すキャリア像を、「ITスペシャリストになること」としました(図の中央)。
では、スペシャリストとは何でしょうか?もう少し深掘りすると、書籍出版や登壇をしていること、アーキテクトロールを担っていること、が挙げられました。
さらに深掘りします(図の下部)。例えば、書籍出版や登壇をするにはどうすれば良いでしょうか?筆者は、独自の経験が必要だと考えました。ありきたりな内容では書籍は書けない、つまり、自分にしかないものを得る必要がありました。そして、独自の経験を得るための具体的な方法が、オリジナルのプロダクトを開発することです(個人開発のテーマについては、2章でも説明します)。また、同様に、技術面やビジネス面も、プロダクト開発を通して学ぼうと考えていました。これらが、戦略に当たる部分です。
つぎにキャリア像に対する理由も考えてみます(図の上部)。ITスペシャリストを目指す理由は技術が好きなことです。さらにその大元を考えると、「アイデア出し」と「考えること」が好きということが挙げられました。これが源泉です。そして、これらを活かすために、"考えることを強みにアーキテクトを目指す"ということも考えていました。
「付録:自己分析と最初の『自分の軸』」にはもっと詳しく書いています。興味があれば合わせてご覧ください。
AIがどんなに強くなっても残るものが独自性
「AIが自分よりも賢くなったらどうしよう…」
これは多くの人が感じる不安だと思います。
ここで重要になるのは、自分の軸の独自性です。なぜなら、生成AIが発展して人間を超えたとしても、自分にしかない独自の強みがあれば、完全にAIに仕事が奪われない(自分がAIに完全に置き換われない)と考えられるからです。
例えば、他人に何かを依頼するとき、既に経験がある人に頼みたいと思うでしょう。
つまり、あなたにしかない経験があれば、上司やチーム(もしくはお客様)から仕事を任せてもらえる可能性が高いということです。AIがどんなに優秀でも、あなた自身に依頼したいと思ってもらえるためには、独自性は重要です。
ここで、「そんな独自性は自分にはない」と感じた方もいるかもしれません。むしろ、それが普通だと思います。
実際、筆者も独自性と呼べるものがほとんどありませんでした。だからこそ「個人開発を通して独自の経験を得ること」を、軸の中でも重要な点として据えたのです。
また、誰もがうらやむような独自性である必要はないと思います。例えば、ねこが好き、大学で数学専攻だった、くらいでもよいと思っています。
【筆者の例】好きなこと、得意なこと、経験
筆者の例で補足説明します。ここでは、独自性を「好きなこと」「得意なこと」「経験」に分けて考えます。
| 分類 | 筆者の場合 |
|---|---|
| 好きなこと | 動物やモノづくり |
| 得意なこと | 数学や論理 |
| 経験 | 個人開発でオリジナルな経験を(これから)作る |
筆者の場合、自分の軸と独自性は以下のような関係があります:
- 数学や論理を踏まえてアーキテクトや設計ロールを目指す
- 書籍を書くため(書籍のネタ)として個人開発をする
ちなみに、経験は、既に経験済みのもの、これから経験できるものの2つが含まれています。筆者の場合は、独自の経験が少ないと感じたため、「個人開発を通して独自の経験を得ること」を軸の中でも重要な点と位置付けていました。
独自性を基に軸を更新する
独自性が見つかったら、自分の軸を更新します。更新のポイントとしては、主に以下の2点が挙げられます:
- 好きや得意を活かしたキャリア像にする
- 方針の見直しや具体化
- 例えば、得意を活かせるロールや好きな分野など
- キャリア像を目指すうえでどんな(独自の)経験が必要か
- 戦略に近い位置づけ
なお、独自性の中には、キャリアにつながらないものや、仕事に直接活きないものもあると思いますが、それはそのままでも構いません。例えば、好きなことも趣味として割り切っても良いと思います(ただし最初は、自分の独自性を洗い出すことに集中するのが良いでしょう)。
軸を見つけるための深掘り
ここまで「軸とは何か?」を説明してきましたが、軸を見つけるにはどうしたらよいでしょうか。
そのための方法が、深掘りです。
まず、深掘りの基本的な流れは以下です:
- ブレストする:「軸は何か?」という問いに対して、思いつく限り要素を書きだします。この時点では完成度、粒度や抽象度などは意識せず、とりあえず書きだすことを重視してください。ツールは何でも構いませんが、最初は紙がおすすめです。
- 気になる要素を深掘りする:書きだした要素について、整理したり、深掘りします。例えば、軸の4要素で整理してみたり、「なぜそう思ったのか?」を問うてみたりします。うまく考えがまとまらない場合は、ブレストに戻るとよいでしょう。
- 図にする:1と2を通して多くを言語化したはずです。自分で書きだしたとはいえ、このままでは自分でも整理しきれていない可能性が高いです。そのため、1枚の図にして全体像が見えるようにしましょう。図にする過程でうまくいかなかったり、気になることがあれば、1や2に戻ってみるのもよいでしょう。
また、深掘りの過程で、生成AIや他人と壁打ちすることを推奨します。一人で深掘りしていると、どうしても視野が狭くなりがちです。「なぜそう思う?」「それは具体的にどういうこと?」と問い返してもらうことで、自分では気づかなかった深みが見えてきます。また、相手に説明することで、曖昧だった点に気づけることもあります。
特に、生成AIとの壁打ちは気軽にできるので、ぜひ活用しましょう。
自分のやりたいことやキャリア像について考えています。一緒にディスカッションしながら、深掘りさせてください。
{現時点で考えていること}
まずは、シンプルにこれだけで始められます(プロンプトのテクニックについては検索すればたくさん出てくると思います。もし興味があれば、調べてみてください)。
また、図の作成を生成AIにやってもらうのも良いでしょう(作図ツールはmermaidがおすすめです)。ただし、"それっぽい図を作ること"が目的ではないので、自分の納得のいく図を作るようにAIに指示したり、自分で最終調整したりする必要があります。
最後に、深掘りの終了条件(目安)を説明します。もし、どこまで深掘りすればよいか迷うことがあれば、以下の3つを目安にしてみてください。
- 図にできること:全体の構造が一枚の図で見渡せる状態
- 一言で言い表せること:「自分の軸は○○だ」と端的に説明できる状態
- すっきりしていること:違和感やモヤモヤが残っていない状態
3つすべてを満たす必要はありません。ただし、どれも満たしていない場合は、もう一度深掘りをやり直すか、他人や生成AIとの壁打ちをすると良いでしょう。
なお、軸を見つける最初の段階では、自分の軸は仮定でも構いません。むしろ、自分の軸の「正解」はありませんし、必ずしも明確な軸が見つかるわけでもありません。例えば、キャリア像が曖昧でも、個人開発を通して明確になることもあります。独自性が見つからなくても、個人開発という経験が独自性につながることもあります。ある程度深掘りできたら、仮の軸のままでもいいので、個人開発に進んでみてください。
また、深掘りは本書を通じて繰り返し登場する道具です。3章での取捨選択、4章での気づきの獲得においても、深掘りは大切です。
コラム:もっと深掘りを学びたい人へ
本書では深掘りや言語化そのものの詳細には立ち入りません。もっと深めたい場合は、以下が参考になります。
- 『解像度を上げる――曖昧な思考を明晰にする「深さ・広さ・構造・時間」の4視点と行動法』(馬田隆明):物事を深く・広く・構造的に理解するための考え方を解説。「深さ・広さ・構造・時間」の4軸は、軸の深掘りに直接応用できます。
- 『マッピング思考――人には見えていないことが見えてくる「メタ論理トレーニング」』(ジュリア・ガレフ著、児島修訳):自分の思考の前提を可視化することの重要性を扱った本。言語化に行き詰まったときのヒントになります。
- 『イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」』(安宅和人):いま取り組むべき課題は何か?という思考に役立つはずです。特に3章での取捨選択の際に参考になります。
また、付録には筆者の実際に使った手書きノートも掲載しています。こちらも合わせて参考にしてください。
【章末演習】自分の軸を見つけよう
実際に、読者の皆さんにとっての、自分の軸を書き出してみてください。
まずは、深く考えずに、色々書き出すことをおすすめします(型にはまりすぎると、本当にやりたいことが見えにくくなるためです)。
具体的な問いとしては、以下を考えてみても良いでしょう。
- 10年後になりたい姿は何ですか?
- それはなぜですか?好き嫌いや得意不得意など、どのような背景がありますか?
- なりたい姿は、より具体的にどんなことをしていますか?
- それらを達成するためにどのようなことが必要ですか?
ある程度出しきったら、整理して図にしてみてください。ツールは何でも構いません(最初は紙に書くのがおすすめです)。
整理する際は、再掲になりますが、以下の4つの要素で考えるとよいでしょう。
- 源泉:「なぜ?」の部分。やりたいこと、好きなこと
- キャリア像:将来(例えば10年後)なりたい姿
- 独自性:周りの人(やAI)にはない自分だけの強み
- 戦略:キャリア像に対して必要な要素
整理してみると、迷うことや曖昧な部分が見つかることもあります。その際は、立ち止まって考え直してみると、新たな発見があるかもしれません。
生成AIや他人とディスカッションしてみると、もっと深掘りできるのでおすすめです。
どこに注力するかが決まらない ~個人開発という実験場~
自分の軸という目指す先が見つかっても、それで終わりではありません。ほとんどの場合、目指す先と現在の自分にはギャップがあるはずです。そのギャップを埋めるためには、実践することが重要です。テーマを決めて、そこに注力して実践していきます。
個人開発は自分の軸の実験場
序章で見た通り、目指す先がないと、戦略がなく、"とりあえず"勉強をするという悪循環に陥ります。実践していても、チュートリアルや挫折して終わってしまいがちです。これを好循環に変えるために、自分の軸に対して、実践へ移ることが重要です。その実践の場が個人開発です。
ここで、本書における個人開発の位置付けは「自分の軸を実現/検証するための実験場」です。個人開発の目的は、自分の軸と現在の自分とのギャップを埋めることであり、つまり、実現(軸に近づくこと)と検証(軸の解像度を上げること)です。
なお、この目的に当てはめて考えると、"個人開発=コーディング"のような狭い定義ではなく、開発全般であったり、技術同人誌やコミュニティ活動など広い定義で捉えることができます(重要なことは自分の軸の実験場であることです)。
目的は「実現」と「検証」
個人開発は自由度が高い「実験場」です。これは仕事にはない大きな利点です。そして実験で得たいものは、実現と検証の2つです。
まず、自分の軸の「実現」です。自分の軸(特に戦略)に従うと、伸ばしたいスキルや得たい経験があると思います。それらを得るために、個人開発を実施します。例えば、軸に従い「プロダクト開発の経験を得たい」と決めたとします。そうしたら、そのまま「プロダクト開発」を個人開発のテーマとして取り組みます。
つぎに、自分の軸の「検証」です。自分の軸とは、明確な正解があるものではありません。そのため、軸の中には曖昧な箇所、実は違う箇所があるはずです。それを、個人開発を通して検証するのです。先ほどの「プロダクト開発の経験を得たい」の例では、そもそもプロダクト開発の経験がないため、具体的なプロセスのイメージがなく、自分に合っているかがわからない状態です。よって、個人開発(プロダクト開発)を通して、軸の解像度を上げることができるはずです。
自分の軸を「テーマ」へと落とし込む
次に、自分の軸という目的を、個人開発の「テーマ」へと落とし込んでいきます。
テーマで決めるのは次の2つです:
| 決めること | 具体的な問い(例) |
|---|---|
| 何をするか | ・開発対象のシステムやシナリオはどうするか? ・どのようなプロセスで進めるか? ・使う技術はどうするか? |
| 大切にしたいこと | ・やるべきことはなにか? ・やらなくても良いことはなにか? |
また、テーマを決めた後に、「自分の軸に従っているか?」を問い直すことも重要です。
テーマは、自分の軸の「戦略」から単に一つ選べばよいのではありません。自分の軸の全体(源泉、キャリア像、独自性、戦略)に「ちゃんと接続しているか?」を問うてみてください。例えば、テーマに対して以下のような問いを考えてみるとよいと思います:
- 将来のキャリア像に対して(小さくても)前進しているか?
- 本当にやりたいことか?
- 独自性があるか?(もしくは独自性を得られそうか?)
次節で、具体例を交えて説明します。
【筆者の例】テーマの候補を並べる
軸からテーマへ落とし込むといっても、いきなり1つに絞る必要はありません。まずは候補を並べてみることをおすすめします。
筆者の場合、自分の軸を整理したあとに、成果として何を目指すかの候補を7つ書き出しました。
| No | テーマ | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | 書籍 | 技術同人誌を書いて販売すること |
| 2 | 設計 | 何らかのシステムの設計をすること |
| 3 | プロダクト開発 | 個人開発でプロダクトを作ること |
| 4 | 登壇 | LT会など、なんらかの登壇をすること |
| 5 | ハッカソン | ハッカソンに出場し、入賞すること |
| 6 | OSS | OSSにコントリビュートして採用されること |
| 7 | 課題分析 | 何らかのテーマに対して、課題分析やユーザーインタビューをすること |
並べてみて気づいたのは、候補には順序があるということです。
例えば「書籍」や「登壇」には、その前提として語れるだけの経験が必要です。そして、その経験を得るには、先に「プロダクト開発」や「ハッカソン」「OSS」などに取り組んでいる必要があります。「設計」や「課題分析」もやや抽象的で、対象となる開発が先にあってこそ成り立ちます。
つまり、やりたいことが、そのまま今取り組むべきテーマになるとは限らないのです。筆者の軸(キャリア像は、書籍出版や登壇をしているITスペシャリスト)から素直に選ぶなら「書籍」ですが、その手前に必要な経験が、まだありませんでした。
こうして筆者は、いま着手すべきテーマは「プロダクト開発」だと決めました。
なお、ここで並べた候補は、あくまで軸で絞り込むための材料です。この中から選べばいいわけではなく、読者自身で候補を挙げてみることをおすすめします。まずは深く考えずに(粒度や実現性は考えずに)、とりあえず候補を出すことが大切です。
【筆者の例】やらないことを決める
テーマの方向性が決まったら、次はその中身です。ここでは、筆者の例を説明します。
筆者のテーマ
- 何をやるか:プロダクト開発で「ねこ育成ゲーム」を作る
- やるべきこと:
- プロダクトとして企画や差別化などを明確にすること
- webでの開発、設計を学ぶ
- AI駆動開発を実践する
- やらなくてもよいこと:
- AI自体を開発すること
- ユーザー数の獲得、収益化
いくつか補足です。
まず、最も重要だと考えていたことは「プロダクト開発」の部分です。実際、プロダクトの中身を考えるということを重視し、途中で「ねこ育成ゲーム」から別のプロダクトへの方向転換をしています(方向転換の詳細は、4章でも説明します)。
AI自体(強化学習)の開発については、以前に開発をしていたときがありました。しかし、なかなか性能が出ず、中途半端な状態になっていました。今考えると、"とりあえず勉強していた"という状態に近かったと思います。そのため、自分の軸を整理したうえで、AI自体の開発は重要ではないと考え、やらなくてもよいことにしています。
ユーザー数の獲得、収益化についても重要視はしないことにしました。理由としては、以下の通りです:
- ユーザーを意識しすぎてスコープが広くなりすぎるため
- ユーザーにウケることを意識しすぎて軸がブレるため
- ユーザーインタビューなどをやると時間(依頼なども含め)がかかりすぎるため
- ユーザー数や収益化よりも、プロダクトについて自分の中でよく考えることを一番重視したため
(もちろんユーザー数や収益化を意識することは大切ですが)上記を踏まえ、まずは、自分でよく考えて、自分自身が納得できることを一番重要視しました。
「付録:自己分析と最初の『自分の軸』」や「商用レベルの深掘り」にはもっと詳しく書いています。興味があれば合わせてご覧ください。
なお、「商用レベルの深掘り」は、実際に個人開発を始めて少し経ってから検討した部分です。始める前にやるべきこととやらなくてよいことが明確になっていることが理想ですが、後から深掘りすることも重要です。
目標を設定する
最後に、個人開発のテーマに対して、目標を決めます。
自由度が高いことは個人開発のメリットですが、その反面、自分次第なのでブレやすいことがデメリットです。そのため、個人開発を始める前に目標を立てておくことで、ブレを最小限にすることが目的です。
ここで立てる目標は、「成果」と「期間」の2つを考えるとよいです。
- 成果:開発したシステムなど、具体的な目に見える成果。
- 期間:成果を達成するための期間。
期間については、自分でコントロールしやすい短期間(6ヶ月など)が良いです。
また、目標に対して計画を立てることもおすすめします。計画を立てることで、目標に対してやることとスケジュールが明確になります。もし、決めた期間で終わらなそうなら、テーマに戻ってスコープを絞ります。ここでも、判断基準は自分の軸です。
また、事前に計画があることで、個人開発を始めてから遅れに気づきやすいメリットがあります。遅れに気づいた場合も自分の軸に従って判断が必要ですが、それは次章で説明します。
【筆者の例】成果と期間を決める
個人開発のテーマについては、前の節で説明した通り「プロダクト開発」です。
- 成果:プロダクトを公開し、少人数でもいいのでユーザーに触ってもらうこと
- 期間:6ヶ月間
そして、計画を簡単に作成しました。まずはやることを洗い出して、2週間ごとにざっくり当てはめていきました。ただ、6ヶ月間で収まらないものが多かったので、機能をいくつか削りました。プロダクト開発がテーマだったので、"最低限プロダクトとして動くもの"を作るという基準で、スコープを削りました。
「付録:個人開発に向けた整理」や「次の学びは『計画』」にはもっと詳しく書いています。興味があれば合わせてご覧ください。
【章末演習】個人開発のテーマを決めよう
個人開発のテーマを考えてみてください。
なお、「はじめに」に記載しましたが、コーディングに限らず、企画や要件定義(文書中心)や技術同人誌の出版など、個人開発は広い意味で捉えて大丈夫です。
自由に考えて大丈夫ですが、以下の方針で決めていくと整理しやすいと思います。
- ステップ1: とりあえずアイデアを出してみる
- ステップ2: 自分の軸に合わせて取捨選択する、独自性が出しやすいテーマにする
- ステップ3: テーマに対して、何が優先かを考える
- 「このテーマで本当に軸を実現できるか?」を問い直す
- テーマの中で曖昧な部分があれば、明確にする
- ステップ4: 目標(期間と成果物、得たい経験やスキル)を決める
複数のアイデアがあれば、それぞれを吟味して1つに絞ってもよいです。1つしかなければ、とりあえず走りだしてみるというのもありです。
コラム:完璧でなくても価値はある
テーマを考えるうえで(もしくは実際に開発を進めるうえで)、"完璧"を目指す必要はありません。ここでいう"完璧"は、例えば以下のような、みんなが見てすごいと言われるような成果です:
- 多くのユーザーを獲得している
- 収益化して副業として稼いでいる
- オリジナルで魅力的なアイデアがある
- 最新の技術トレンドを活用している
- アーキテクチャや設計が良くできている
もちろん、これらができたら素晴らしいですが、"完璧"に至るまでにとても労力がかかる、もしくは途中で挫折してしまう可能性が高いです。
本書では、あくまで自分の軸を決めて、その達成の手段としての個人開発であると考えています。よって、目指すのは"完璧"ではなく、自分の軸に一つでも近づくことが一番重要です。
筆者の場合、6ヶ月間プロダクト開発をして、最後には(最小限の機能で)リリースをしました。ただ、終わってみて感じたのは、品質はお世辞にも良いとは言えないものでした。
しかし、それよりも得たものが大きいと感じています。例えば、プロダクトの企画時点では"良いものができそう"と感じていたのですが、実際に作ってみると"思ったよりダメだな"と気づくことが多かったです。実際、完成したものは良いとは言えませんでしたが、「次やるときは気を付けよう」という学びを得られたことは、自分の成長という意味では大きな成果だと思います。
以下は、有料版に収録されています。
- 3章広く浅くに陥る ~軸で取捨選択する~
- 4章悪循環を好循環に変える ~違和感を気づきに変えて軸を育てる~
- 終章その先へ
ここからは、巻末の付録「半年間の個人開発の記録」の一部を抜粋してご紹介します。
付録:半年間の個人開発の記録
付録では、筆者の軸のありのままの記録——筆者が実際に使ったノート、最初に考えた軸、そして軸の更新の軌跡——を載せています。
本文でもいくつか具体例を書きましたが、付録ではさらに踏み込んで書いています。本文だけではよくわからなかった、もっと具体例を知りたい、という方はぜひ参考にしてください。
個人開発を本格的に始める前
2023年、私はIT企業(SIer)に就職しました。
それまでは、大学院(修士)で数学を学んでいました。数学専攻とはいえ、学部時代にプログラミング(C言語)の授業を1コマ×1年間受講したり、大学院で機械学習の授業を1コマ取ったり、IT領域も少し学んでいました。この経験もあり、プログラミングに興味を持ち、趣味で簡単なプログラム(素数判定や多項式計算のプログラム)を書いていたこともあります。IT企業への就職も、これらの経験がきっかけでした。
けれど、プログラミングはかじっていただけ。IT企業への就職後は、学ぶことだらけです。新卒研修はもちろん、AWS、データベース、ネットワーク、AI技術など色々な本を読んでいました。技術だけでなく、ビジネス本もいくつか読みました。余談ですが、印象に残っている本は、ミノ駆動本『良いコード/悪いコードで学ぶ設計入門』(仙塲大也著、技術評論社、2022年)と『解像度を上げる』(馬田隆明著、英治出版、2022年)です。
本だけでなく、資格取得もです。AWS系の資格、IPAの基本情報や応用情報などを積極的に受験していました。新卒2年目には、IPAの高度資格のデータベーススペシャリストやネットワークスペシャリストにも挑戦、無事合格ができました。
学ぶべきことがたくさんあり、ここまでがむしゃらに頑張ってきました。
しかし、本文でも書いた通り、新卒3年目の途中から、「このままで良いのか?」と感じることが増えてきました。まだまだ勉強することはたくさんあるけど、勉強だけではダメな気がしてきたのです。
コーチングの始まりと、成果目標の気づき
新卒3年目の7月、大きな転機が訪れます。それは、コーチングとの出会いです。偶然、会社の方がコーチングを学んでいて、その実習として、半年間のコーチング(その方がコーチ、私はクライアント≒受講者)に誘っていただいたのです。本当に幸運なことだったと思います。
ちなみに、コーチングとは、対話や質問を通じてクライアントの目標達成や成長を支援する手法です。スポーツのコーチがわかりやすいかもしれませんが、特徴的なのは「コーチとクライアントが対等な関係であること」です。ティーチング(「教える」を重視した手法)と比較して語られることも多いです。教えてもらう場ではないため、自分で目標を決めて、セッション(私の場合は、約半年間、隔週30分のセッション≒1on1)でのコーチとの対話を通し、目標達成に向けて行動していきます。
当時の私も、「コーチングってなんだ?」と多少不安を感じつつも、経験や学びになるだろうと思い、誘いを快諾しました。
ここで、半年間のコーチングの目標を考えました。先ほどの通り、"不安"を感じていたため、キャリア像を明確にする(生成AIに負けない、不安が消える)という目標にしました。
そして、第1回のセッション(1on1)の日。初回は、コーチと目標設定のすり合わせの場でした。コーチに、目標を伝え、いくつか質問をしてもらいます。
その中で印象に残っている質問が2つあります。正確な質問(表現)は忘れてしまいましたが、それは以下の2つです:
- 「生成AIとの関係は競争相手?協力者?」
- 「成果目標は何か?」
1つ目は、生成AIとの関係について聞かれたものです。生成AIが登場し、漠然とした不安を感じていました。これは、競争相手として捉えたからこそであり、協力者(仕事のパートナー)として捉えることもできるのではないか、という問いです。
「確かに、仕事でも生成AIは活用しているし、単純な競争相手ではないのかな…」
そう感じました。ただ、不安を感じている、つまり競争相手であることも正しいとも思います。このセッションのときも、うまく質問に答えることができなかったことを覚えています。そのとき私は、実は深く考えられていないのではないかと感じました。不安を感じているわりに、大して向き合っていなかったのです。
2つ目の印象的な質問は、成果目標についての質問です。これは、2章「目標を設定する」でも書いたものです。先ほどの「キャリア像を明確にする」は明確な成果がない目標でした(この目標が悪いわけではなく、成果目標ではなくて、成果ではないが自身の成長に関わるということで「成長目標」に分類されるとのことです)。この質問にもうまく答えることができず、私の「不安が消えることが成果」のような回答をしていたと思います(不安が消えることも、どちらかというと成長目標です)。
この初回セッションのあと、かなり考えました。「もっと深く考えないといけない?」や「成果は何だろう」など、いまの自分に向き合ってみようと思ったのです。
自己分析と最初の「自分の軸」
自分と向き合う上でやったことは、とにかく紙に書くことです。まずは、思ったことを紙に書き出しました。見返すと小さめのノート(A5サイズ)の10ページも使っていました。
長くなりますが、順番に紹介していきますね。なお、付箋は、本書での説明のために後から付けたものです。元々のノートは黒字(ボールペン)の部分だけです。
まずは、気になっていることを順番に書き出しました(図)。
初回セッションでも印象的に残った成果目標について(付箋①)、そして、「そもそも今まで成果目標を立ててなかったのはなぜだろう?」ということを考えてみました(付箋②)。今まで、成果目標を意識して立てたことは少なく、せいぜい「資格を取る(ふわっとした目標で、期限は明確に決めない)」くらいでした。改めて、成果目標を立てなかった理由を考え、思ったのは以下の2つでした:
- 「成果目標を立てても、達成できないかもしれない…」という不安があったからかもしれない
- そもそも成果目標を立てなくても頑張れていて、問題はなかったのかもしれない
(この続きは、付録本編でお楽しみください)
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
この続きは、有料版でお楽しみいただけます
- 3章広く浅くに陥る ~軸で取捨選択する~
- 4章悪循環を好循環に変える ~違和感を気づきに変えて軸を育てる~
- 終章その先へ
- 付録半年間の個人開発の記録(手書きノート画像10枚を含む、約19,000字)
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